惚気の無法地帯

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たとえばのはなし

 

家の近所にあった洋菓子店のお菓子が大好きだった。食べると心が温かくなって幸せな気持ちになった。

焼き菓子の詰め合わせを買って毎日一つずつ食べるのを楽しみにしたり、仕事を頑張った日にはご褒美にケーキを買って帰ったり、お祝いの日は奮発して豪華なホールケーキを頼んで、メッセージを言う時に少し照れながらチョコレートのプレートを作ってもらった。ある日突然そのお店が看板を下ろすことになった。

 

いつも日常に幸せを与えてくれていたお店を失うことになった。

閉店の理由は、パティシエさんの海外進出だった。

 

大好きなお菓子が食べられなくなって悲しかったけど、パティシエさんは人生の大きな選択をした。それを否定していい人は誰もいない。

 

しばらくして、洋菓子店のあった場所はビストロになった。

 

店内に入ると、洋菓子店の雰囲気が残っていて懐かしい気持ちになった。

メニューを開いて、一番上の料理を注文した。料理を口に入れると、優しくて心が温かくなる味がした。とても好きだと思った。

 

洋菓子店とビストロで出される料理は違うから、食べた時に前と違うって感じるのは当たり前で、どちらも美味しくて好きだと思った。これが全てだと思う。口に合わなかった人もいるかもしれないし、今の味が好きだって人もいると思う。

 

形が変わってしまって寂しいって気持ちも、大好きだったなっていう未練も、あるものだと思う。それでもまたこの場所に大好きなお店ができたことを喜びたいと思う。